sakane高円寺レポート

高円寺には大学に入ってからよく行きます。
高円寺純情商店街といえば、ねじめ正一の小説で有名ですが、実際非常に人情味ある商店街です。
路地に本棚がむき出しになっている古本屋があると思えば、ファサードが全面ツタに覆われてしまった謎の建物も。
商店の隙間から奥に続く道は住宅街に続いてて、そこに突然猫が現れたりして、とにかくめぐりがいのある街です。
今日訪れた藤村龍至さんの新しい建築は、駅から徒歩1分もしないくらいの商店街の途中にあります。そこは純情商店街ではありませんが、目の前の建物の二階にはおしゃれなカフェがあったり、近くには古本屋があって、高円寺らしいスケールの環境です。
1階部分には噂の構造コアが4つ。スカンとしています。
コア以外には壁がなく、四面ガラス張りなので、まるで外部のピロティのよう。高円寺の商店の1階の奥行きの不透明さに比べると、ここの1階は非常に開放的だと思いました。
さて、私たちは藤村さんの案内でこのタワーの屋上目指しながら各階を回っていったのですが、2階から5階まではメガ梁につられているというすごいことになっています。しかし、部屋内部にいる限りは、部屋がつられているなど思いもしません。ただ、5階では室内にメガ梁が半分ほど(450mmくらい)でているので、そこでこの建物の構造の種明かしがちら見できるわけです。この半分むきだしになった梁がまるで作りつけの棚のように出ていて、いろいろ置けそう。メガ梁に花を飾って住むとか、なんていうコントラスト。建築学生としてはこの階が一番、この建物を住みこなす感覚に浸れそうで、私は住むなら断然5階です。笑
メガ梁の上で自由に天井が操作されたユートピアのような屋上フロアは、住戸の間が路地のようで、でも地上ではないので不思議な感覚。ギャラリーを思わせる天井高の部屋は、窓ももはやほとんど空を望むだけなので、ここは高円寺の路地性をもった抽象的な空間という印象でした。ちなみに他の階の部屋からはTHE高円寺という風景を望むことが出来ます。これらの階は部屋から出れば普通の共用廊下があって、本当に普通。しかし、この建物でどの階にも一貫して他と違うのが、やはり設備コアがあるところでしょう。実は各住戸にはこびとサイズのドアがあって、管理人しか開けられないのですが、そのドアは最下階から最上階までをつらぬく設備コアへの入り口です。まっすぐ走るダクトたち。効率的な排気システム。普通の部屋の隣にこんな機能的空間があるとは。むしろこの設備スペースの普段の見せ場がないのがもったいない気がしました。しかし、藤村さんがこの建築の一番の主張をこうして建築でくるんだところに、藤村さんの本気を感じました。
さて、屋上のフロアの一室で藤村さんを囲んでこの建築について話をしたのですが、何人かの学生からはディティールについてのコメントがいくつかありました。たしかに、ディティールについての話はどの建築においても絶えないと思います。とくに住宅となると身体スケールには神経質になる。
だけど、もはやこの建築のプロジェクトが始まったときから藤村さんのこの建築で目指すもの、そしてその先にひろがる藤村さんの建築はそういったディティールとは違う次元であって、だから部屋も普通で良かったんだと思います。
建築家がその建築で目指すものは何か?を深く考えさせられた見学会でした。

以上、坂根の即日レポートでした。

批判的工学主義の原風景

駅のホームから見ると、この建築の異質な外観の構成は一度で視認できる。それぞれが縦に飛び出したボリュームはそれぞれが独立性をもっているようにも、連続性をもっているようにも捉えられる。それぞれの縦ボリュームのスケールが高円寺の町並みのスケールと近似していて、それは高円寺とのまちとの関係においても同等のことがいえそうだ。高架下独特のスケール感のある商店街を歩いていくと、そこに突如として表れる。工学的なまでに広々としたスケールの一階部分、それが上部のボリュームを一気にまとめ、全体として敷地からセットバックしている。急に全体性をもって現れてくるその姿は、高円寺というまちとある距離感をもって対峙しているかのよう。近づくにつれて独立性が強くなる。それは圧倒的に異質な光景だった。


そこから内部へと入っていく。急にスケールはヒューマンスケールに落とし込まれ、迷路のような内部通路を介して、多様なバリエーションを持った個室群と繋がっている。全体を構成する深層のストラクチャー等が表層の個室空間には表出されているのが面白い。エンジニアリングから決まった壁の厚みが一つの個室の中でも変化しておりそれが開口部に現れたり、4階部分の個室には5階床を支えるメガ梁が見えたりと各個室でこの建築の全体性を感じることができる。そこが面白い。そしてそこがこの建築の最も重要な要素であろう。ただ、それがもう少し色々な形で表出してきたらなお面白い空間になり得たんじゃないかと思う。開口にしても網戸やレールなどそういった懐にある部材をもう少しスリムに収斂させた方が、個室全体としてその違いが視認しやすいし、それがその居住者の振る舞いにも影響してくると思う。もしかしたら上の窓のフレームを隠さない方がそのコントラストが明確に表出してくるのかもしれない。そういったディテールがインフラ的スケールの深層と居住者の振る舞いを左右させるヒューマンスケールの表層を架橋する重要なものだったりするのかもしれない。それぞれの居住者の集住での空間体験というのはかなり一義的で多様性の乏しいものであることは間違いない。ただそこでその建築(の全体性)を見せること感じさせることというのは、各空間をより豊かなものにするんじゃないか。その表し方というのは空間構成の仕方でも、先程述べたディテールにも還元できる話だと思う。ここの徹底こそが批判的工学主義の基盤になる部分であると思う。


そして、一向は最上階へと足を進める。いや〜テンション上がりましたまじで。風の抜ける露地空間から見える風景を見て、はっと息を呑む。これこそまさに「新スケープ」。
その階の各個室空間ものびやかになり、天井が高く開口も大きい。最後に入った、最も天井が高い個室の開口はまるで青空を切り取る額縁のよう。その開口だけが、他の開口とは全く意味の違うものになっていたように感じた。その対比が僕の中では衝撃的だった。窓というものの持つ根源的な建築言語が多様な意味を持つことを改めて実感させてくれた。


この建築は全体の空間構成として、「批判的工学主義」という強烈なコンセプトを補完してあまりあるぐらいの評価ができると思う。そしてその可能性を強く感じた。
これが「批判的工学主義の原風景」。そう強く感じた。その可能性とともに。

K project特別内部見学!!

今日、午後から、招待された学生10数名とで建築家藤村龍至さんの高円寺に程なく竣工を迎える「K project」の特別内部見学が実施されました。
僕達g86が中心に、ブログでの発表活動を行っている学生たちが、オープンハウスを来週に控えたKprojectを事前に見学させてもらい、その日に感想をブログ上でアップするという、今までに無い新しい試みです!!
それぞれの学生のブログURLは以下に記載しますので、それぞれの感想を比較するのも面白いかもしれませんね!
では、順次僕達g86(今回は小林は欠席)もそれぞれの感想をアップしていきます!!

基壇の上にタワーのシルエット

風が抜ける最上階の路地空間

ギャラリーのような天井の高い部屋

高円寺を望む部屋とメガストラクチャー

美術館のような廊下

構造と設備のインテグレーション