vol.1株式会社オージャスト代表取締役 金功勇氏

g862007-09-09

社内イベントをプロデュースする株式会社オージャスト代表取締役の金功勇氏へのインタビューをUPします。オフィスは国立新美術館東京ミッドタウンの丁度真ん中に位置し、めまぐるしく更新を続けるこの場所で「経験経済」等、都市や経済を考える上で非常に興味深いお話を聞くことが出来ました。

金功勇氏profile
1978年大阪生まれ、神戸大学経営学部を卒業後、松下電器産業株式会社において、社内ベンチャーとして人材系戦略子会社の立ち上げに参加する。その後、株式会社幕末(ベンチャー通信)の副社長を経て、2004年4月、株式会社オージャストを設立。サーバントリーダーシップ認定コーチ資格保持。


インタビュー内容

「経験経済ということ」

山道—株式会社オージャストの活動は、別に建築を作っているわけではないけどある種の企業空間を作っている気がして建築的だとも言えると思います。最近よく言われているのは将来的に建築家が扱うのは実際の建築物だけじゃなくもっと広がっていくと言われています。場を作るというか。例えばmixiなどのSNSも今の時代の建築と言えるかもしれません。
金氏—共感できるところがあります。
僕らは時代認識と自分達の世界観が合わさったことをやっています。
まず時代認識に関しては“経験経済”です。孫正義氏はITが出始めの時は「世界は絶対ITになる」という時代認識をしていて、僕らはこれからは経験経済になっていくという時代認識を持っています。経験経済っていうのは、ある経済学者が提唱したもので、産業が農業から製造業に移行して、製造業からサービス業に移行して、そのあとに来るものとして考えられています。
まず農業で最低限食べるものというか原材料を提供して、製造業では加工してモノを作って行きました。そしてサービス業が来たのはモノの価値から便益の価値に移行したからです。便利を買ってた、時間を買ってたということです。それでこれらは順番に値段が下がっていきます。この現象はコモディティー化と言って段階的に社会が求めているものじゃなくなっていくので、どんどん価値が下がっていきます。で、サービスはどうかっていうと今限りなく無料に近づいていってるでしょう。つまり便益の時代は終わった。便利になった人たちがつぎにお金を払って何を求めるかって言ったら、それは「経験」である。
g86—なるほど。
金氏—いろんな便利なものには安いお金を払うけど、例えばリッツカールトンの食事の瞬間には十万二十万払うとか、ディズニーランドはお金を払ってでも行くとか、結婚式にもお金をかけるとか。「思い出」というか「記憶」を買うって言うんだけど、よかった瞬間を買うっていうことに付加価値が完全に移行している。「モノ消費からコト消費へ」とか「モノより思い出」とかマーケティングは今経験に移ってきている。今まではメーカーも製品の性能を提案してたけど、その製品を使って何が出来るかってことを提案し始めた。そして今ではその製品を使ってどんな素晴らしい経験、思い出が出来るかということを提案し始めた。だから車のCMとか性能について一切言わず「家族旅行」とかバンバン出してるでしょ。
山道WINMXとかWINNYとかP2Pの時代から今ではyoutubeニコニコ動画等のインターネットサービスで音楽とか映画とかテレビとかタイムレスにヴァーチャルに手に入るインフラが整ったから主題が経験に移っていったと。
金氏—そうだね。インターネットがあまりにも発達して情報をたくさん得られるっていうことに皆感動を得たけど、所詮一人の人間が処理できる情報量には限度がある。どんなに素晴らしくて大きな図書館に行っても自分が読める範囲でしか読まないでしょう。だから自分の器自体を変革したいって思う人が出てくる。
山道—なるほど。
金氏—どれだけインターネットを見まくっても自分の許容以外は流れていくわけ。だから自分自身がある情報が欲しいとか吸収するためには自分が成長しなくてはダメでしょう。そのために情報を流し込むのではなく強烈な経験というものを提供する必要がある。
g86−おぉ。
金氏—経験を経て情報をキャッチできるようになるというか。
小林—逆に、情報があるから経験したくなるっていうのもあると思うんです。プロ野球のテレビ放送が決まった時にすごい反対があって、テレビ放送があると皆球状に行かないんじゃないかという危惧があったらしいです。でも実際テレビ放送が始まると観客動員数は倍増しました。当時の人たちはテレビで簡単に見れると今度は実際の野球場の空気感とか経験をしたいと思うようになったんだと思います。情報の時代、情報の時代と言って無料でいろいろ見られるようになったからこそリアルな経験の価値が出てきたという流れもあると思います。
鎌谷—これからのインターネットの展望というのは経験経済から考えるとどうなっていくと思いますか?
金氏—かつて一番最初に会社を作った時にまだ経験経済という概念を知らなかった時なんだけど、社会にはヴァーチャルな空間がどんどん広がっていって、やっぱりリアルなコミュニケーションというのが重要になってくるんじゃないかと思いました。mixiとかのヴァーチャルなコミュニケーションが爆発的に広がった時に補完的な役割としてリアルなコミュニケーションがツールや戦略として考えられると。何故かというとリアルなコミュニケーションというのはヴァーチャルなコミュニケーションと違って人に与えるメッセージの力が強烈というか。実際にイベント空間に来る人の感情っていうのは、ダイレクトに影響を与えやすいわけです。それはかなり濃いコミュニケーションが取れるから。補完関係を築くというかインターネット企業がたくさん競争していく中でリアルなコミュニケーションというのは経営戦略的にもツールになりえるなと。この時は経験経済を知らなかったから企業のIT化と対比として考えていただけだけど。
鎌谷—具体的に、経験経済という観点から、今後の金さんの事業の展望をお聞かせ下さい。
金氏—すべての人はいろんなところに経験を求めだすという認識を持っていて、最終的にはうちの会社は経験演出の分野で世界的にも引っ張って行きたいなと。今世界ではディズニーランドが先頭あたりを走っていてリッツカールトンとかスターバックスとかも経験経済的視点で超優良企業と言われている。なんでコーヒーにあんな高い金を払うのかというとあの空間にいたいからだよね。でもこれらの企業ってイベント企業じゃないよね。経験経済って言ったらイベントが本業だろうと思う。でも経験経済的視点で取り上げられているイベント会社はいないからイベント会社として世界に出たいというのがあります。
鎌谷—ディズニーランドだったらそこでしか経験できないけど、イベントだったら企業と組めばいろんなところに経験を提供できますよね。
金氏—そうそうそう。どこの場所でも経験演出をしたい。というように思ったのは時代認識もあるんだけど自分自身のコアがあって。例えば絶対に自分が一生やっても後悔しないのはイベントなんですよ。学生の時に会社作って失敗したんです。
鎌谷—そうなんですか。
金氏—その時に軸が無かったということを痛感しました。天狗になったらへし折られたというか。
鎌谷—学生の時と言うと僕らと同じくらいですか?
金氏—学部三年生だったね笑。やっぱ社会について考え始めるでしょ。
山道—どういったことを事業としてしていたんですか?
金氏—ほんと軸が無くて、アルバイト情報誌を創刊して配布して広告費取ったりインターネットでサイトを作ったりイベントやったり。ビジネスってやりはじめると何をやっても一度は落ちて軌道に乗るまで苦しい時が絶対あるんだけど軸が無いからそこを乗り越えられなくて。落ちた時にもっとオイシイ話無いかなとか考え始めちゃってどれも軌道に乗らずバタン。それで、リベンジする時には一生情熱をかけてやっていけることを事業にしようと思い始めて、で、前職のベンチャー通信にいた時に100人くらいの社長にインタビューしたら「情熱に勝る成功法則無し」ということがわかった。それで幼少期から自己分析を徹底的にして自分が情熱をかけられるものが何かって探ったらやっぱりイベントをずっとやってきたからイベントかなって。でイベント会社に修行に行ったりして、社員総会っていうものをビジネスとして扱ったりし始めて。
鎌谷—今まで聞いてて感動して鳥肌立ってきたんですけど笑。これからの社会が具体的にどう変化していくのか、どこに向かっているのかという話は最近あまり聞かなくて、今の社会学者でも今までの過去をロジックを重ねて整理するだけで、また自分の経験に基づいた話が多いから片寄りがあって(サブカルチャー系は特に)、建築家との対談などでも自分の範疇をお互いに語りつくしておしまいっていうのが多いんですね。建築家や社会学者のこの殻を飛び出して無い感はなんなんだろうと考えてまして。この「経験経済」という考えは、叙情的なバイアスのかかっていない経済学者が社会の変遷を分析して、そこからその後の展望を導きだしている。このお話しを聞いて今泣きそうです笑。
金氏—泣いてください笑。世の中の企業がインターネットインターネットって騒いでる時に自分だけ取り残されたのかと思っていたけど経験経済に出会った時は自分の時代認識は正しかったと思って相当やる気が出ました笑。これは行ける!みたいな。


「神は細部に宿る」

山道—建築を作る時には建築家の思想があると同時に現実的に、例えばこっちに道があるとかこっちに他のビルがあるとか南はこっちだとかそういったことが具体的な条件となってデザインが進んでいくと思うですが、金氏の場合はどういったことを手がかりに“決定”していくのですか?
金氏—僕らもまだ手探りな状態なんだけど、僕らがやっているのは3ヶ月間はとりあえずガーっと走って3ヶ月に一回は仕事を振り返るということをしていて経験経済に関するノウハウを蓄積していこうとしています。それで指標になるものをコンパスと呼んでいてそれに落とし込んで行こうとしています。で事業を進めていく上でその感覚さえ持っていれば上手く行くという法則を落とし込んでいこうと思っています。それを今探しているところです。それで、たぶんこれはクリエーターに共通する条件だと思うんだけど「自分がやりたいことをやっている間」は売れない。
g86−なるほど。
金氏—芸術の世界は違うよね。芸術の世界では自分の思想にいかに人を引き付けるかというか自分の脳みその中に招待するっていう感じだけど。でもビジネスではお客さんありきだから自分がやりたいということを完全に捨て去るということが必要だと思う。例えば佐藤可士和さんが言っていたのはクリエーターはお医者さんだと。患者の話を聞いてデザインというのはそこから導き出されるものだと。僕らもそういうスタンスを持ちたいなと思っています。社員総会なんかをプロデュースする時には、社員総会ってのは半年に一回とかあって皆もの凄いプレッシャーの中で仕事をしているからそこに感動の素材っていうものがある。その素材をいかに引き出せるかが仕事だと思っている。だから徹底した顧客理解というか僕らだったらクライアントの企業の全社員の顔を覚えるくらいまで徹底してやっていて、その方たちの中からいかに素材を引き出せるかが企画を立てるときに重要になってくる。だから基本的にはクライアントの話を聞いてそれを演出に組み込んで行くという感じ。
鎌谷—プロフェッショナル言論にも“顧客主義”って出てきますよね。
金氏—うん。顧客主義であっても、自分がやりたいことってやっぱ出てくるよね笑。でも佐藤可士和さんはどうしようもない困難な仕事にぶち当たってもう諦めたことがあったらしいんだけどそこで自分のデザイナー、芸術家としての道を辞めてお客さんの言うことを聞いて作っていく人になろうと決めた瞬間からブレイクスルーしたって聞きます。
あとは僕らとしてのこだわりというか、イベントの世界でも「神は細部に宿る」って言われているけど。細部までテーマに統合されていると人間の感動の経験というのは強化されていく。具体的にはディズニーランドに行ってたしかに凄いんだけどこれは皆の想像の範囲でしょ。でもトイレに行ったらドアノブまでミッキー!みたいな笑
g86−爆笑
金氏—これが強化要素っていうもので、見るもの見るものすべてが強化していく。でそこにあってはいけないものがあったらマイナス要素になる。だからディズニーランドからは外の構築物っていうのが見えないようになっている。ユニバーサルスタジオジャパンは大阪らしくて高速道路がバンバン走ってるけど笑。だから人はそういうところで冷める笑。
小林—ディズニーランドは見えない地下に社員用のコンビニとかがあるらしいです笑。
鎌谷—人が倒れたりしたら地下に運ばれるらしいです笑。
金氏—そうだよね。夢の世界ではあってはいけないことだもんね笑。そこまで徹底するプロフェッショナリズだよね。
鎌谷—建築の世界にも「神は細部に宿る」って言いますよ。


「文化は周辺から生まれる」

山道—社長が六本木にオフィスを構えた理由っていうのを聞かせてください。
金氏—笑。
鎌谷—それは僕らやっぱり聞きたいんですよ。
山道—渋谷とかでもいいじゃないですか笑。
金氏—良い事言わないとダメだよね?笑。
鎌谷—率直な意見を笑。
金氏—やっぱり一番大きかったのは仕事で使う会場が六本木なのよ。
山道—あーなるほど。
金氏—だから物資を運ぶ時に便利でしょう。でも住んでみて思ったのはやっぱり象徴的に見られるよね。
金氏—そういって欲しかった?笑
鎌谷—東京のシンボルってなんだと思いますか?さっき象徴って言葉が出てきてしまったのですが笑。
金氏—東京のシンボル。むずかしいなぁ。。。
山道—例えば六本木ヒルズとかはやはり東京の新しいシンボルだと思うんですがどうですか?
金氏—このオフィス出るとすぐ近くに六本木ヒルズが見えるでしょう。でこのオフィスの
窓からは東京ミッドタウンが見える。世間が六本木ヒルズって騒いだら次の瞬間はミッドタウン。やっぱ時代の流れの早さは儚いというか。そういうのを感じる一方で、、、
鎌谷—逆に言えば、シンボルは無いということですか?
金氏—そうそうそう。ミッドタウンもすぐに消費されてしまいそうだよね。更新が早いというかシンボルを考えにくいよね。
山道—かつてライブドアが盛り上がってきた時にヒルズ族って言葉があったんですが金さんはそこに憧れっていうものはありますか?当時のベンチャー企業の人たちは皆そこを目指していたと思うのですが。
金氏—やっぱりあるよ。社会のことを本当に考えていたかどうかわからないけどヒルズ族になった当時のベンチャー企業というのはやはり売り上げを出して、それなりに社会に認められたっていうのがあるからやっぱり憧れはある。
鎌谷—ということは六本木ヒルズやミッドタウンは東京のシンボルたりえるということになりますね。
金氏—そうだね。今で言うならば、ミッドタウンが象徴かもね。やっぱり僕らの成長イメージは窓から見えるミッドタウンに重なる笑。
山道—金さんは渋谷には行きますか?
金氏—行く行く。イベントで使うのは渋谷とか六本木のクラブか新宿のワシントンホテルとか浜松町の方とか。
山道—では六本木を拠点に選んだというのは経由することが多いからですか?
金氏—そうだね。六本木であって良かったことというのはあとからついてきたという感じ。
山道国立新美術館とミッドタウンの丁度間にあるから最初びっくりしました笑。
金氏—笑。でもここのオフィスに引っ越してきた時は国立新美術館もミッドタウンも無かったんだよ笑。
山道—まさに後からついてきたって感じですね笑。
金氏—ここに引っ越してきたとき下にパジャマ屋さんがあったんだけど当時は潰れるんじゃないかと思ってた。けど今は美術館に来るおばあちゃんで大繁盛、笑。最初この辺りは少しガラ悪かったんだけどミッドタウンがオープンして人通りが凄い増えてガラと変わった笑。
山道都知事選で話題になった黒川紀章さんが国立新美術館を設計しましたが。
金氏—黒川さんが都知事になったら面白いと思ったんだけどね笑。石原都知事は文化を壊してきてるからね。六本木とかクラブがどんどん壊されてる。街には街の特色があって、そこに根付く人がいて、そこで文化が出来てるのに石原都知事が六本木を健全にするっていって浅草に変えるって言ったんだっけなぁ笑。
鎌谷—観光地化すると?
金氏—そう。クラブのオーナーとかマネージャーが六本木の独自のサブカルチャーを作ってきたのに石原都知事は全部を同じにしようとしていてそれでは日本が世界的に面白くないと思われてしまうと思う。
小林—均質化というか周りとの差がなくなってしまいますね。
金氏—そうそう。多様性が無くなるし文化が生まれていくこともないし。「文化は周辺から生まれる」っていう有名な言葉があるけど、文化って必ず中心からは生まれない。
g86−なるほど。
金氏—中心にいる人のために作られた世界に違和感を感じる周辺の人から文化は提案されるわけでしょう。やっぱりサブカルチャーにはそういう大事な役割があると思う。ヨーロッパなんかそうでしょう。なのに東京ではそういうものを潰そうとしていて、それは変化を生まない社会だから絶対に成長しない。今日もクラブのマネージャーと話していたんだけど石原都知事が作った条例はステージがあったらダメとか。
g86−えぇ。
金氏—ステージがあったら風営法違反でバシっと切られる。
山道—じゃぁ六本木からはクラブは消えていってしまうのですか?
金氏—皆生き残りをかけて、ステージを無くしたりして闘っているけど難しいよね。下手したら渋谷もそうなっていくかもしれないよね。でもそうなったら皆東京から逃げてしまうから。地方から新しい文化が生まれることになるかもね。でもやはり東京はそういうのを招き入れる都市じゃないと。

山道—普段イベントを主催するときはクラブが多いですか?
金氏—そうだね。あとはホテルの宴会場とか。で目標は来年再来年辺りに直営店舗を出したいなと。
g86−おぉ。
山道—直営のイベント会場?
金氏—そう。そのための会場ってあんまり無いのね。
山道—それはどこに建てるんですか?
金氏—そうだねぇ。六本木、笑
一同—爆笑。
金氏—まだ決まってないけど、そういう店舗が一つあったら面白いよね。イベントのためだけの空間。
鎌谷—すごくいいですね。フレキシブルに色々できるし。
金氏—そう。空間として自由度が高くて、ディレクターがすべて見渡せる部屋があったり。
鎌谷—すごく建築的じゃないですか笑
金氏—笑。


「経験建築」

小林—以前伺ったとき夢はオリンピックをプロデュースするという。
金氏—そうそうそう。開会式をプロデュースするのが夢だね。イベントでどこまで社会に影響を与えられるか試してみたい。オリンピックの開会式って世界中の人が集まっててみんなが平和を願っててそこにイベントとしてメッセージを乗っけるというような。
鎌谷—クラブとかイベントという視点で都市を見ていくと面白そうですね。
金氏—僕らはイベント会場を考える時にお客さんが角を曲がって会場が見えた瞬間から経験演出が始まると思っている。TATOO東京っていうクラブがあるんだけどもう解体が決まってしまったんだけど、そこは佇まいに凄い雰囲気がある。TATOO東京の前を歩いただけで皆なんだろうって思う。今はレストランになってて中はオーケストラ会場になってる。
鎌谷—今はもう見れないんですか?
金氏—見れる見れる。ここはいつもイベントに使われてきて、何故かというと着た瞬間に雰囲気があるから。企業の製作発表会とか映画監督の挨拶とかいつも使われてる。六本木はここまで建物が詰まっているけどTATOO東京の前には広場の空間があってイベントの時はレッドカーペットがひかれたりするからすごい興味を引く。
鎌谷—NYにもこういった形式のイベント会場があって周りは建物がつまっているけど、広場があってその奥に前面がガラス張りで中のイベントの様子が魅力的にライトアップされた建物がありまして、すごく印象に残っています。
金氏—なるほど。東京のイベント会場は中ばっかりで外観に雰囲気が無い。ベルファーレとか凄かったけど、他のイベント会場には見た瞬間にワオっていうのは無いよね。そういうのは建築側が経験として提案したら格好いいんじゃないかな。
鎌谷—いいですね。「経験建築」みたいな。笑
一同—爆笑。
金氏—時代に沿ってる笑。


「イベント文化を作る」

山道—20年とか30年とか長期的な展望を聞かせてください。
金氏—そうだね。イベントの可能性に皆が気付いてどんどんイベント文化が広がっていくというところに自分の社会的な意義を感じる。主催したイベントが成功したことがあって参加者の社員が皆泣いてスタッフも泣いて「よかった」というのを見てたらたくさんの人がイベント文化というかそういう方向に関心が行く気がしました。
山道—なるほど。ネットを使った事業とかは考えていますか?
金氏—考えてることは考えてる。例えばある人がイベントやりたいと考えた時にイベントってすごく面倒臭いんです。会場探しから手配から機材の手配から誰か歌手を呼びたいとか司会を用意したいとか、そういうのは作業だからね。それは便利になったほうがいいと思うからそういうのをまとめて、いろんな人がイベントをやる敷居をグッと下げるということを考えてます。そういうのが出来れば使ってもらえるとおもう。
あとはyoutubeみたいに僕らがやったイベントを流したりとか。
鎌谷—イベント文化を広めるためのツールとしてインターネットを使うという感じですね?
金氏—そうだね。自分らで今会場データベースとか手配するところをリストアップしてるけどそれが出来上がればそれをupすれば皆が使えるという感じです。
でも今はとにかく深める。人を感動させるノウハウっていうのを徹底的にどれだけ見つけられるかっていうのを探っています。感情の動きっていうのを徹底的に研究して解明していきたいと考えています。
g86−なるほど。「経験経済」についてよくわかりました。今日はお忙しい中ありがとうございました。
金氏—いえいえ、こちらこそ笑。