Vol.14 プロダクトデザイナー 鈴木有理氏


g86 London インタビュー第2弾です。今回はロンドンをベースに活躍されているプロダクトデザイナー、鈴木有理さんにお話しを伺いました。プロダクト、インタラクティブデザイン、音楽に対する氏のユニークなアプローチがとても新鮮でした。

鈴木有理さんはデジタルアートフェスティバル東京、東京デザイナーズウィーク、デザインタイドに出品される予定です。


ptofile

鈴木有理
プロダクトデザイナー電子音楽
1980年生まれ、東京出身。
明和電機のアシスタントワークを経てRoyal College of Art, Design Products
学科にてSamHecht、DurrellBishopに指事、ロンドンをベースに活動している。
ほとんどの作品は音と人との関係性を探る目的にデザインされており、その実験
的な作風は好評を呼び、LABoral(スペイン)、Designhuis (オランダ)、
Arnolfini (イギリス)にて現在展覧会を展開中。
同時に電子音楽に傾倒。世界最古の電子楽器「テルミン」奏者として数々のイベ
ントに出演。イギリスとドイツのレコードレーベルより2枚の自身の音源を発表
している。
http://www.yurisuzuki.com



interview内容 

(以下敬称略)


澤田ーでは始めに有理さんの作品を解説していただいていいですか。

鈴木ーではプロモーション用のビデオを見て貰いながら説明しますね。まず僕のバックグラウンドについてなんですけど、RCAを今年で卒業したんですが元々僕は明和電機のアシスタントを五年ぐらいやってたんですね。そこでやってたことはエンジニアリングでありパフォーマンスもやって、最終的にはショーの組み立てにも加わったりしてました。エンジニアリング的なことから、そのテクノロジーでそうやって人を喜ばせるかってことをずっと五年間やってたんです。自分は一応音楽もやっているので、テルミンていう楽器を弾いたり、まぁ自分自身で一応レコード出したりしてるんですね、ダンスミュージックみたいな打ち込みの音楽が好きで。RCAの二年間の間は音楽、サウンドエクスペリンスみたいな、音によってどういう経験が得られるかみたいなプロジェクトをずっとやっていて。

最初は「Performance Object」といって物自体がパフォーマンスしてくれるようなプロダクトデザインですね。これはミュージカルケトルといってこれ全然評判悪くて全然つくんなかったプロジェクトなんですけど、これは一応その今度のオランダの展覧会では見せる予定で、何かっていうとノズルに笛がくっついていて、お湯が沸くとそれが鳴るっていう笑。
これはジェリーフィッシュテルミンといって、水槽の中にクラゲが入ってて、そのクラゲの動きが音に変換される装置です。サインウェーブをコントロールするような仕組みが入ってるんですが、

澤田ーおぉ。これは何を使ってクラゲの動きを感知してるんですか?センサーですか?

鈴木ー赤外線センサーですね。で、これがRCAの卒業制作でやったサウンドチェイサーというプロジェクトで、レコードをカットしてコースをつくるとそれが音楽のトラックになってて、その上をこういう風にまぁ走るという。



澤田ー可愛いですね笑

鈴木ー結構可愛い。なんか自分の作品で初めて動いてるの見て笑っちゃった笑。でもそれって多分重要なことで、今まで作った作品て大体どう動くのか自分の中で分ってて実際動かしてみて、あぁやっぱりこう動くんだって感じであんまり笑いみたいなのが自分の中に無くて、でもこれは作ってる時点でそう動くかは分ってたんだけど、実際動かしてみたらそれ以上に面白かったんですよ。これはすごい自分の中で初めての経験で。これはRCAの卒制の一部で、これを含めて七つ作ったんですが、ちょっとビデオ用にカテゴライズされてるんでまたそれはちょっと後で説明します。

これはTip Tapというプロジェクトで、デザインプロダクツっていう僕の勉強してった学科がまぁなんでもやるところで、何をテーマに二年間やっていったらいいかなと思った時にやっぱり新しいことをやっても二年間じゃ短いので自分の得意な分野を掘り下げていこうと決めていて、運がいい事にYAMAHAとの協同プロジェクトが最初あったんですね。どうやったらミュージカルリスナーをプレーヤーにできるかというプロジェクトで、要は初心者のための楽器を作りなさいていうテーマで、ハンマーの中にソレノイドっていう勝手に電気で動いてくれる装置が入っていて、スキルが無くてもリズムを勝手に刻んでくれる、持つだけで勝手に演奏してくれるような楽器をつくりました。

澤田ー(ビデオを見ながら)使ってる人が楽しそうですね。

鈴木ー卒業制作ではこれを発展させたものを展示したんですけど。これってプログラムで勝手に動くだけだったんで、声でハミングした音がそのままフィジカルなアウトプットになって出てくるものをつくりました。スピードも変えられます。

これは新しいミュージカルインターフェースを作ったらどうなるかっていうテーマで作ったんですが、靴にプルートゥースユニットが仕込んであってそれがそのbluetoothによって信号がコンピューターに送られるようになってて、タップを踏むとそれが音としてでてきます。例えば歩くとドラムの音が鳴ったり、こんなファミコンみたいな音が入ってたり。
このプロジェクトで面白かったのが、音のコンテンツのとしてリバーブの効いた音とかを使うと狭い中でも広い空間にいるような錯覚があってそれがすごい面白かったですね。あとはロボットのような音にすると自分が重機になったような錯覚を覚えて、自然と足取りが重くなったりするんですよね。音の錯覚みたいな事が面白くできたんじゃないかなと思ってます。

これはターンテーブルをどれだけ楽器として作れるかっていうテーマで作ったもので、昨今のエレクトロニックミュージックてのは割とライブの時もコンピューターに張り付いて演奏するようなものが多くて、それをDJっていう要素とデジタルミュージックをどうやったら融合できるかなってことでこれを作ったんですけど、独立したターンテーブルがあってそこにいくつもトーンアームが載せることができてループのレコードを再生してそれを楽器のように演奏できます。再生する位置を変えられたり、違うループの音が同時に再生できることで割とテクノとか電子音楽の手法でかつフィジカルに演奏できるターンテーブルをつくりました。

澤田ー同じレコード上に置くので、BPMも自然と同じになるんですね。

鈴木ーそうなんです。このためにループレコードってのをつくって。
これは最近のプロジェクトで、自分の今やってるテーマでどうやったら人がパフォーマンスとかアトラクションに入り込めるかという。これはヴィクトリア&アルバートミュージアムのヴィレッジフェイトっていうイベントがあるんですが、それは毎年デザイナーがゲームなりお店なりのコンテンツをやるものなんだけど、これは椅子にバイクの空気入れがついてて、パイプで相手の風船に繋がっていて、膨らまし合って先に相手のを割ったら勝ちみたいな笑。単純なんだけど、パフォーマンスとして凄い面白かったんです。

澤田ー笑。(映像を見ながら)

鈴木ー理屈抜きで笑っちゃうんですよね。自分でやったパフォーマンスを後で自分で見るって結構重要な要素だと思っていて、例えばディスニーランドとかって落ちる瞬間をカメラに撮ったりするじゃないですか。これもそれを一応取り込んでて、マイクが仕込んであって人が叫んだり風船が割れたりする瞬間にカメラで撮るようにしてたんですよ。それで最後にプリントしてあげるということをしました。

これが150人ぐらい二日間できて、結構人気でした。


これはサウンドグラフィティというプロジェクトで、街全体がどうやったらパフォーマンスなり音楽的なアクティビティーをできるかと思って、こういうことができるよっていうインフォメーションだけつくりたくてやったんですが、QRコードって日本だとむちゃくちゃ有名だけどこっちだと全然まだ普及してなくて、これから普及するとは思いますけどまだ目新しくて、割とエッジな人でも使ってもOKな感じなんですね。グラフィティとかこういうことやるエッジな人って凄くコマーシャルなものを嫌うと思うんですけど、ロンドンではまだ流行ってないのでセーフ。これは何かっていうとサウンドコンテンツみたいなのを街の壁にスプレーで吹き付けて、音でグラフィティを聞こうみたいなことをやりたかったんですね。サウンドグラフィティみたいなことは色んな人が試みているんだけど、あんまり上手くいってないんですね。スプレーを吹き付けるっていう行為とゲリラ的なラジオみたいな要素が融合できないかなと思ったんです。

澤田ー今ちょうど東京のg86メンバーが「自由が丘ストリートエキシビジョン2008」というの商店街の壁面にQRコードを展示してそこからアーティストの作品に飛ばすっていうプロジェクトをやってるんですが、グラフィティ的な要素ってのは面白いですね。

鈴木ーなるほど。あとQRコードは30%欠けてても読めるよくできたバーコードなので。

澤田ーそれはスプレーを使うグラフィティには適してるかもしれないですね。

鈴木ー考えてるのはインフォメーションだけ流して、ローカルのミュージシャンなりが自分の音をアップロードして、それを自分のローカルな場所に吹き付けることで、携帯さえあればすぐそこで音楽が聞けるような。QRコードジェネレーターで簡単にQRコードは作れるんですよね。

これはホワイトチャペルなんですけど実は何カ所か既に実際にやっていて、

澤田ー笑

鈴木ーこれ完全にイリーガルなので笑。まだ残ってるんですけど。

あとワークショップも色々やっていて、プロダクトデザインするというよりは人がどうやって経験するかということに今もっと興味があって、例えばテルミンのワークショップを小学校とかデザインミュージアムで開いてみたり。RCAのワークショップで紙でつくった楽器を皆で作ってみたり。

これが卒業制作のシリーズです。さっき紹介したものに加えて、指で再生できるレコードプレーヤーってのを作りました。このレコードのシリーズは何かっていうと、今って音楽媒体のメディアとかってあと写真とかってどんどん実体のないものになっていて、昔だったら写真だったっらフィルム、音楽だったらレコードっていうちゃんと形のあるものが保存出来たんだけども、今はそれがどんどんバーチャル化していって僕なんか音楽のコレクションのほとんどがmp3でハードディスクに入ってるんだけど、ただのデータなんですね。データが消えた瞬間に全部を失っちゃうんですよね。それをもっと力学的に音を出すことを、レコードを使ったガジェットで人に経験して欲しいっていうのがこのプロジェクトだったんですね。ただアームを置くのと指を使ってレコードを鳴らすのだとやっぱり感覚的に違うんですよね。

サウンドジュエリーってものも作りました。音っていうものがどれだけの価値を持つかってのがこのプロジェクトだったんですね。ブレスレットにレコードの溝が切ってあって、レコードプレーヤーに置くと実際に再生できるという装置。今ブリストルで展示を一個やってるんですけど、そこでは五ポンドでブレスレットに自分の声を録音できるということをやりました。

最後はデジタルアナログというもので、CDの盤面にレコードが切ってあるんですね。片側にデジタルが録音してあって反対側にアナログで録音してあります。


「performance object / performance entrance」

澤田ー始めの方の作品は「performance object」ということでオブジェクトが人の力を介さずにパフォーマンスをするプロダクトで、

鈴木ーそうですね、プロダクトデザインでもおまけ的要素がその物の価値をあげることがあると思っていて、例えばバング&オルフセンのテレビがショーの幕が開くような感じでつく、とか、アップルにしてもゴミ箱のアイコンがちょっと揺れたりしたりするだけなんだけど、そういったものが物のバリューをあげたりするところがあって、そこっておやつ的なものなんだけど、自分はそこにすごい惹かれるので、そこだけちょっとデザインしたいなと思っていて。さっきのケトルのアイディアもそこから来ていて、リチャード・サパーのケトルで二音鳴るものがあって、それが汽車の汽笛みたいにすごくいい音が鳴るんですよ。

僕はプロダクト・デザイナーではあんまり無いので、全体的なものよりスペシフィックなある部分をがっとやりたいというところがあって。でもそれだけではマスターのプロジェクトとしては弱いということで結局やめちゃったんですけど。

澤田ーなるほど。でも後半の方の作品になっていくと、オブジェクト自体よりもそれをプレイする人自体がパフォーマーに変わるというか、端から見ていて面白い動きをしていたりしますね。それは明和電機パフォーマーとして参加していたことが影響したりしてるんですか?

鈴木ー多分、自分の興味っていうのが段々、プロダクトとインタラクティブするっていうよりも、人をどうやってアクティビティに巻き込んでそれをどうやって演出するかっていうことに興味が移っていったと思うんですけど。まぁ割と明和電機でやってたのはそういうことだったので、そこがバックグラウンドとしてあると思うんですけど、自分ではそこに最初気付いては無かったんですけど段々そういう部分は出てきました。自分は人を楽しませればいいやって感じです。

鈴木ー昨今のプロダクトデザインっていうのは人に考えさせたりするものが多くて、それは重要なんだけど、その反面プロダクトのユーモラスな部分というか人がとっつきやすい部分みたいなものが欠けてきてる気がしていて。自分はそういうエントランスをつくるのが上手い人間なんで上手い具合にそこに自分の要素を入れられないかなと思ってます。


「Tangible Bits / メカニズムが明快であるということ」

澤田ーMITの教授で石井裕さんという方でタンジブルをテーマにインタラクティブなインターフェースをすっと研究されてる方がいます。例えば瓶の蓋を開けると音楽が流れてくる作品があるんですが、そういう身体的に操作するタンジブルインターフェースに近い要素を有理さんの作品を見ていて感じたんですが。

鈴木ーその作品は見ました。そうですね、それも一個の要素だと思います。僕の教えてくれてた先生がまさにそれをずっとやってた人で、ダレル・ビショップっていう人なんですけど、彼はまさにそのタンジブルの第一人者で彼もRCAの出身なんだけど、彼の一番有名な作品でアンサーマシンというのがあってまぁ留守番電話なんですけど、当時は全て電子化されていて、デジタルなものをフィジカルに操作するって概念が無かったその時代に彼がつくったアンサーマシンってのがメッセージが入る毎にビー玉が出てくる笑。

澤田ーほぉー。

鈴木ー帰ってくるといくつメッセージが入っているかビー玉の数で分って、そのビー玉をポンってデバイスに入れるとメッセージが再生されて終わるとそれが違う色で出てくる。

澤田ー面白いですね。

鈴木ー彼はそういうフィジカルでタンジブルなインターフェイスをずっとやってきた人で80年代からずっとやっていて、彼はアップルのフィジカルインターフェイスを研究する部門にいて、そういう要素が今のアップルのインターフェースに利用されたりしてる。

澤田ーマックのインターフェイスはすごいですよね。直感で動かせる。普段マックを使ってるんですが、ウィンドウズを使う時にいつも凄い感じるのが、二本指でスクロールできないとかそういう小さくて単純なインターフェイスの違いが結構ものすごく歯痒くて、インターフェイスって身体的にやっぱり深く根ざしているんだなと思います。

鈴木ーYAMAHAのプロジェクトをやってた時にタンジブルインターフェイスについてずっとリサーチしてたんですけど、音楽のフィールドが多分一番今タンジブルインターフェイスが叫ばれてて、結構沢山あって例えばYAMAHATENORI-ONという楽器だとか。

澤田ー岩井俊雄さんですね。ただ有理さんの作品て、インターフェイスだけフィジカルにするというよりも、その元もレコードだったりフィジカルなものを扱ってますよね。

鈴木ーデジタルで光るようなものがあまり好きでないのかなと思います。あと例えばこのiPhoneって中になにが入ってるが全然分らないブラックボックスじゃないですか。昔のものって一見凄い複雑に見えるんだけど、裏を開けると動きが明快なんですね。動いてたり、メカニズムが見れるものが凄くいいんですよね。自分の中でブラックボックスはあんまり好きじゃなくて、そこをもっと使ってる人が分る方が面白いなと思うんです。

澤田ーなるほど。

鈴木ーもう一人ティム・ハンキンていう人もすごい尊敬していて、彼はメカニカルにおもちゃを作っていて。例えばお金を入れると色々動くドネーションボックス(募金箱)だったり、ロンドン動物園のメカニカルクロックをつくったりしてるんですね。全部色々動いて凄い楽しいんだけど、裏から見るとどういう風に動いているかすごい明快なんですよね。何も見えないようなものよりも、人が見てあぁこういう風に動くのねっていう単純に分ってかつ楽しいものが作れればいいなぁと思ってます。

澤田ーなるほど、それはデザインとかをする人間じゃなくても、面白いと感じれると思いますか?

鈴木ーそうですね。割とそうだと思います。明和電機も見た目は複雑だけど、実は凄い単純なんですよね。僕は元々明和電機の凄いファンでそこから明和電機に入ったんだけど、展覧会とかで作品とか見ると、どういう風に動かしてるか分るんですよね。例えば、ここにソレノイドが入っててスイッチが入るとここがどうこうとか。でも単純だけどコントロールの仕方によって全然映え方が違う。


「異邦人の街」

澤田ー話は変わりますが、そもそもなんでロンドンに来ようと思われたんですか?

鈴木ーそれはもうRCAがあったから。明和電機ってRCAから熱烈な支持があるんですよ。明和電機のパフォーマンスでロンドンにきた時も沢山RCAの人がきていて、その後RCAの人が明和電機のスタジオに遊びにくるようになったんですよ。その時にその人が持ってきた仕事だったり、過去自分が好きでファイルしてた作品を見てみたら全部RCAデザインンプロダクツの出身だったんですよ。そんとき僕の日本での大学に本当につまらなくて完全に腐ってたんですが、そんな時にこんな面白い場所があるんだって知って。こんなに面白いものをつくってしかもビジネスとしてちゃんとやってる人がいるっていうのが凄いなと思ってこれはもうRCAに行くしかないなと。明和電機の仕事も凄い楽しかったんですけど、サポートしてるだけじゃなくて自分でも何か作りたかったので辞めました。明和電機とやるならコラボレーションする立場でやりたいなと。

来る前は全然知らなかったんですけど、こっち来てみたら色んな民族がぐちゃぐちゃに集まってて音楽にしても混ざったとこから出てきたものが存在してて、そういう部分が凄い面白い場所だなと思いました。

ロンドンの場合ほとんどンの人が色んな場所から来てる人じゃないですか。だからボーダーがない。音楽でロンドン発のグライムってジャンルがあるんですけど、本当にぐっちゃぐちゃのとこから出てきたものでダブ、ジャマイカ、ヒップホップが混ざったところにイランとか中東の要素が入って、さらにそこに中国が混ざったりしてて笑。

澤田ー笑

鈴木ーもうグライムのムーブメントは終わっちゃったけど、そういうものが出てくるってところが面白いですよね。あと自分は凄いエレクトロニックミュージックが好きだったんで、こっちに来てAphex Twinがやってるリフレックスっていうレーベルを聞くようになって、すごい面白くて奥が深いんですよね。あとロンドンで第一線で活躍してるデザイナーって大体イギリス人じゃなかったりするじゃないですか。RCAのデザインプロダクツのチューターもイギリス人は一人とかだったし。

澤田ー建築家も外国人が多いです。

鈴木ーそうだね、ザハ・ハディドとかレム・コールハースだとか。プロダクトだとロン・アラッドもイスラエル出身だし。他もアメリカ人、イタリア人、ドイツ人だったり。

澤田ーロンドンの外国人の割合って30%超えてて、イギリス人の中にもインド系だったりアフリカ系が沢山いて、ロンドンってほとんど「外人の街」って感じですよね。

鈴木ーそこがロンドンは面白いかなと思いますね。スウェーデンに行った時に日本人ていうだけで珍しがられるんですよね。でもそれってあんまりいい事じゃないと思ってて、他と同じように見てもらってないと面白いことって出来ないんじゃないかな。日本人であることのクリシェが使えるのってもうとっくに終わってて、今はもうクオリティの勝負なんですよね。オタク文化とか和のテイストでなんかやってそれだけで評価される時代ってのはもう終わってるんだろうなと思います。まぁ自分の中にある日本の要素ってのは使った方がいいと思うけど。自分の好きなことをやって、そこから出てくるものがやっぱりいいのかなと思います。RCAで感じたんですけど、人からのこうした方がいいとかいう忠告ってあんまり聞かない方がいい笑。自分から出てきたものじゃないと全然ダメなんですよね。

澤田ーなるほど、比べて東京はどうですか?

鈴木ー東京出身ですけど、あんまり今の東京の状況って分ってないんですよね。東京って凄く面白い街で、ロンドンと同じで飽きないですよね。でもアトラクションが凄く多くて街に溢れてる分、あんまり自分で何か作ろうって感じが起こらない感じがしますね。あと東京ってショーケースだと思っていて、それこそ世界中の色んなところからレコードも集まるし本も集まるし、何でも集まる凄い場所なんだけど、その反面ここ10年で東京から出てきたもので何があるかなって考えると、村上隆のオタクアートだったり深澤直人のシンプルなプロダクトとか以外に何かあったかなと。音楽にしてもオリジナリティのあるものがなかなか出てこないなと思っていて、ロンドンだったらグライムだったりフランスだったらテクトロニックっていうものが今でてきているんだけど。日本だとperfumeとかになるのかな、テクノポップというか、でもそれならこっちでもあるしなーと。ピチカートファイブなんかは割と東京的なオリジナリティはあったかなと思うんだけど。

あと日本は一般の人から企業までのデザインに対する興味がこっちより薄いんじゃないかなと思います。日本人で50歳ぐらいの人でそういう芸術的ものに興味がある人ってそこまで多くないじゃないですか。人気があるのはモネだったりピカソだったりで、決して現代アートの展覧会だとお年寄りの人とか行かないじゃないですか。割とこっちだとテートの今度の展示はダメだったとかそういう話が普通に出てくるんですよね。

澤田ーこないだ建築のオープンハウス(一年に一回普段入ることの出来ない建築に入る事ができる日)でリチャード・ロジャーズのロイズに行ったんですけど、

鈴木ー僕何年か前にいってロイズで4時間、ガーキンに入るのに8時間並びましたよ笑。

澤田ー笑。そう、凄い量の人が並ぶんですよね。建築にあんなに一般の人の関心があるっていうのが凄いなと思います。

鈴木ーそう。それが凄い面白くて、皆アートだったり建築だったりよく知ってるんですよね。あとこっちだと現代アーティストのダミアン・ハーストだったり、トレイシー・エミンとかが文化人として国民的に知られる存在だったりしますよね。皆アートとかに興味があるんですよね。

澤田ーバンクシーみたいなアーティストが成功してて、HMVとかで本が平積みになってる状況って凄いなと思いますね。

鈴木ーうん。多分ロンドンの場合はコーディネーターがすごい充実してると思うんですよね。ブランディングをしてアーバンからでてきたバンクシーみたいなアーティストをピックアップしてビジネスにできる人がいるっていうバックグラウンドがロンドンにはあって。日本にも小山登美夫とかそういう人はいるんですよ。ただ土壌としてまだまだ新しい人がどんどん出て行く環境は整ってないんじゃないかな。

澤田ーギャラリストとかキュレーターもこっちは多いですよね。

鈴木ーそうですね。汚い話ビジネスと密接に関わってるからそういうことがやってけるんだと思いますね。

澤田ーマーケットが確立してるんでしょうね。

鈴木ーそう。皆投資としてアートを買うってことをするんですよね。ブランディングだと思います、本当に。

澤田ーブレア首相の時のクール・ブリタニアみたいにイギリス政府の都市の対外的なブランディングは上手いですよね。世界中にブリティッシュ・カウンシルがあってデザインの事情を集めたり、逆にデザイナーを売り込んだりする。

鈴木ーデザインを産業としてちゃんと扱ってるんですよね。まぁどこがいいか分んないですけどね。イギリスなんてお金転がして儲けてるようなもんですからいつ景気悪くなるか分んないですし。

澤田ー笑。今日は面白い話をありがとうございました。